茨城の歴史点描

茨城の歴史点描㉛ 造園学者本多静六がみた偕楽園

2022.07.16

茨城の歴史点描

 天保十三年(一八四二)七月一日、偕楽園が開園しました。今年はちょうど一八〇周年に当たります。
 偕楽園の特色については、以前詳しく書いたので、今回はわが国における造園学の草分けともいえる本多静六(慶応二年~昭和二十七年)の偕楽園評価をご紹介したいと思います。
 本多は、現在の埼玉県久喜市に生まれ、苦学して東京農林学校(現在の東大農学部)を卒業、ドイツに留学し博士号を取得、母校の教授として後進を育成しながら、日比谷公園や大濠公園など各地の都市公園の設計や明治神宮の森の育成などに携わった人物です。埼玉県ではその業績をたたえ「本多静六賞」を制定、公園や林業関係の功績者を表彰しています。
 本多が水戸で「常磐公園の特色と其改良意見」と題して講演したのは、大正九年のことでした。以下は講演を報じた「いはらき」新聞の抜粋です(一部仮名遣いを改めました)。
 「常磐公園は、日本の三大公園の一に数えられる名公園であるが、一般の見物人がこの公園を観ての批評を聞くに、大抵は彼等を失望せしめているようである。案外立派でないという。しからば常磐公園は実際価値なきものなりやというに、私は否と断言して憚らぬ。それは観者に眼がないのである。造園学の立場より観れば、同公園は三大公園中最も優れたものであると言ひ得るのである。凡て芸術は鑑識眼の無い人には無価値である」
 「常磐公園は、それを中心として周囲二里の仙波湖、緑が岡等自然の儘なる山水を抱擁せしめた有史以来の大公園である。欧米諸国においても、従来の所謂ガーデンには飽きて来て、自然の景色そのままを応用したナチュラルガーデンが尊ばれるようになった。瑞西(スイス)のセネバ湖における、米国人がナイアガラの巨瀑を中心とせる大公園の計画の如き、そのほか伊太利(イタリア)英国等の大公園、皆此の趨勢を語っている。烈公は八十年前に之をなした」
 「時世に迎合し行く必要より改悪された箇所のあるは遺憾である。我輩はあえて改悪という」
 「ただ梅林から広場へ出て広い仙湖の方を眺めたとて何の感じも起らぬ。常磐公園の本当の見方はやはり旧の萱門から入って中門を通り、好文亭に登って見晴らせば始めて森厳なる陰影より出で、広い明るい景色を味わうことができる」 見事に庭園としての偕楽園の本質をとらえている点はさすがです。と同時に「時勢に迎合して改悪」することに警鐘を鳴らしている点に注意したいところです。

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