いばらきの公共事業(歴史をたどる)

いばらきの公共事業 県水戸土木事務所編⑤

2023.03.10

いばらきの公共事業(歴史をたどる)

石川川浚渫で冠水解消

渡邊 一夫 氏
元県土木部長(当時・県水戸土木事務所長)

大島恭司 氏
元県土木部総括技監(当時・県水戸土木次長兼事業調整課長)

 石川川は水戸市街地を源流として涸沼川に合流する一級河川です。延長約6㎞の下流域には広大な水田が広がっています。この水田は江戸時代、偕楽園が造成された頃の新田開発によるものと聞いております。今回お話するのは、地元の協力と職員の知見を生かし、短期間の浚渫工事で大きな効果を発揮した時のことです。

浚渫土を堤防に積み上げ

 石川川下流域は大雨のたび冠水が発生しておりました。冠水が起きる都度、道路も通行止めをせざるを得ませんでした。この状況を解消するため、県では河口付近の約1㎞区間の改修に取り掛かりました。
 ちょうどこの区間は近接して県道が走っており、県道をバイパスしてこの道路用地も利用しながら改修することが計画されました。
 私も道路建設課でこの事業に係わっており、急ピッチでバイパス工事が進められました。
 私が水戸土木事務所の所長になって間もなく、このバイパスの竣工式が行われ、やれやれと思っておりました。
 そのころ、この石川川流域の土地改良区の幹部の皆さんが所長室に要望に来られました。「冠水がひどい。早く改修を進めてほしい」というお話でした。
 そう簡単に改修を終わらせることはできませんが、どうにかならないかと考えました。
 現地を何度も何度も見に行きました。改修を実施している区間は別にして、その上流約1㎞は土砂がかなり堆積して葦に覆われていました。所内で検討したところ、「急いでこの1㎞区間の浚渫をやってみよう」となりました。
 早速改良区の皆さんにこの話をし「急いで浚渫をやってみます。この浚渫土を水田に入れさせてもらえませんか」と頼みました。
 すると「所長さん、水田に入れるよりとりあえず堤防にあげておいて水が抜けたら整形すれば良いでしょう」という話を受け、そのとおり実施してみました。
 結果は大成功。工事は短期間で終わり、河床は下がり流速もはやまった気がしました。堤防も立派になり、魚が泳いでいるのが分かるようになりました。
 冠水も減り、地元の皆さんに喜んでいただけ本当に嬉しかったことが思い出されます。

短期間で大きな効果発揮

河川断面を拡げ結果良好

大島恭司(おおしま きょうじ)
1950年6月26日生まれの72歳。74年度に入庁。初配属は都市計画課。県水戸土木事務所次長兼事業調整課長などを経て2011年4月15日に県土木部総括技監で退職。

 水戸市を流れる一級河川石川川は水戸市元吉田を源として涸沼川に流入する延長約7・1㎞、流域面積16・6平方㎞の小河川です。
 私は平成15年から2年間水戸土木事務所に在籍しておりましたが、当時は時間雨量20㎜程度の雨が降ると、県道下入野・水戸線の入野橋から下流はヘドロや土砂で埋まっていたため、たびたび氾濫して通行止めになっておりました。
 そこで閃いたのは、境土木事務所の河川係長時代の出来事でした。当時、一級河川向堀川上流は未改修のままで、一度雷雨があると国道125号はもとより、古河駅前広場までも冠水するほどの問題河川でした。
 その際に行った工事が、計画断面は度外視をして現況の河川をただ単に掘削し、土砂は周りの田んぼに置かせてもらい、河川断面を拡げたことでした。結果は非常に良好で、雷雨での冠水はなくなりました。
 「石川川でもこの方法が使える」と思い、早速地元の土地改良区に話をして協力を得て、入野橋から下流約1100mの掘削を行い、掘削した土砂はそのまま堤防に積み上げて、河川流下断面を従来の3倍程度に広げました。
 そうすると、ちょっとした雨では県道の冠水や田んぼへ水があふれることもなくなりました。
 また、川底にあったごみやヘドロもなくなったため、川底には砂利が現れました。なお、工事費も数百万円で済んだと記憶しています。
 その後、うれしいサプライズがありました。2~3週間が過ぎた頃でしょうか。突然土地改良区の理事長さんたちが水戸土木事務所の所長室を訪ねて下さいました。
 石川川が洪水もなくなり、非常にきれいになったということで、感謝状を持参してくださったのです。今までの経験で土地改良区から感謝状を受ける経験がなかったので非常に思い出深いことでした。

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