ロッコクにともる灯
2026.03.11
コラム「四季の風」
◆どこにでも生活がある。道ゆく人にも、何気なく通り過ぎる家々の中にも、突如として日常を奪われた土地にも。作家・川内有緒氏によるノンフィクションエッセイ『ロッコク・キッチン』は、福島県の国道6号、通称ロッコク沿いの町に暮らす人々のキッチンを通じ、その思いや現地の今の様子を記す。
◆東日本大震災から15年が経とうという今、そこでは故郷に戻ってきた住民、移り住んだ人、仕事や復興に従事する人、様々な背景を持つ人が生活する。「みんな、なに食べて、どう生きてるんだろ?」という帯の言葉に共感し、この本を手に取った。
◆震災の影響による、取り返しのつかない現実の厳しさが眼前に迫るのと同時に、そこで生活する人々がキッチンでつくる物がなんとも魅力的で、町の人々をどこか身近に感じることもできた。
◆著者は「東京と福島は遠くないし、地続きなのに、とても遠く感じる」という。私はチャイを飲むたび、この本を思い出すようになった。読む人の心とロッコク沿いの町との距離を縮めてくれるのだろう。明日はそれぞれの生活の中、ひと時でもあの日のことを思い出してほしい。(S)

