茨城の防災 危機管理を問う 12
2025.12.25
「茨城の防災」危機管理を問う


元県土木部技術管理統括監兼検査指導課長 梅澤 信行(うめざわ のぶゆき)
1964年2月2日生まれ。61歳。89年に県庁へ入庁し、土木部都市計画課に配属。その後、土木部都市局都市整備課長、技術管理統括監兼検査指導課長を経て、2024年3月に定年を迎えた。現在は県建設技術公社常務理事を務めている。
地元建設業の協力は不可欠
現役当時、TX沿線開発などの面整備に携わることの多かった私は、発災直後の災害対応の経験があまりありませんでした。
開発候補地を選定する場合、一般に高台のエリアとすることが多く、水害の危険度がもともと小さいうえに、一部にある谷津田等の低地は調整池や公園緑地として活用することで、さらに危険度を下げています。
また、古くからの高台ということもあり、その地盤は強固な場合が多く、地震動に対する地耐力も兼ね備えていることとなります。
こういったことから、私は新人の頃から知らず知らずのうちに「災害に強いまちづくり」、すなわち特定の地域においてではありますが「予防保全型の災害対応」を行っていたことに、改めて気づかされました。
さて、私の県職員生活を通じて印象深い災害経験といえば、やはり「東日本大震災」。印象に残っているエピソードを2つほど紹介させていただきます。
1つ目に、発災当時のこと。私は「つくばまちづくりセンター(現在の土浦土木事務所つくば支所)」に勤務しており、都市軸道路の整備を担当しておりました。
発災前日の3月10日、当該道路のPC橋桁が完成し、福島県須賀川市の橋梁メーカー工場へ完成検査に赴きました。思えば検査が1日遅れていれば、帰ってこられない騒ぎでしたが、確か発災2日後の3月13日だったと思います。
福島第一原発の騒ぎのまっただ中、橋梁メーカーから「橋桁が倒壊して破損しました」との連絡がありました。
自分たちの工場も被災して、上を下をの大混乱だったと思いますが、そんな中、わずか2日というスピードで連絡してくるメーカーの誠実さに心を打たれたものでした。
橋桁は、幸いにも破損の程度はそれほど大きくなく、補修を経て現在はつくばみらい市の中通川に架かっています。
2つ目です。その2年後、平成24年度に私は水戸土木事務所都市施設整備課に着任し、茨城・水戸の誇りである偕楽園・弘道館の整備・管理を担当することとなります。
後日談になりますが、その10年後の令和4年にも担当することとなり、県職員人生で2度も偕楽園・弘道館に携われたことは、私にとって大変に光栄なことでもあります。
着任当時、震災から1年1か月が経過していましたが、偕楽園の地表部にかかる復旧工事はほぼ完了しており、今後の災害に備えるため、耐震性貯水槽・充電機能付きソーラー街灯などを設置したり、好文亭の耐震補強設計などを行いました。
また弘道館においては、復旧工事がこれからというところでしたが、本堂などは国指定の重要文化財となっており、国(文化庁)が工事を担当し、県(水戸土木)は外塀など復元された建造物の工事を担当しました。
復元されたものとはいえ、その構造・意匠は文化財たる本堂と全く同じものであることから、復旧工事の設計・施工については、幕末からの卓越した技術を受け継ぐ事業者が精緻かつ慎重に行い、また見えないところで耐震性を高める技術(外塀の頭部に配置される瓦は裏側でワイヤー止めしている等)が施され、大いに勉強になりました。
これら2つのエピソードは、一見全く違う事象に見えますが、ある共通点があります。
建設業界に携わる多くの人々が「誠実・迅速・卓越・精緻・慎重」に関わっていただいた賜物であるということです。
近年、激甚化・頻発化の一途をたどる自然災害の現場においても、地元建設業界のこういったご協力が不可欠であります。
業界を持続可能な形に転換
現在、建設業界においては、従業員の高齢化、若年層の雇用確保の困難化に加え、令和6年4月からは時間外労働規制が本格実施される等、その働き方改革が待ったなしの状況になっています。県においては、適正価格・工期の確保、ICTやAIの積極活用など、働き方改革に資する取り組みを進めているところではありますが、まだまだこれからというところかな、とも思います。
さて、県を退職してもうすぐ2年となりますが、この間に建設業界の方々から聞こえてくるのは、「近年、公共の仕事が少なくなってきている」といった声です。
いかに生産性を高め、人材を確保しようとも、それを活かす「場」がなくなってしまっては、業界の体力が低下するのは明らかです。いざ災害が発生した時、地域の守り手としての業界が疲弊していることにより、地域の人命や貴重な財産を守り切れない事態も懸念されるところであります。今後の業界においては、知恵と工夫を凝らしながら、官・民・(学)が一体となって、中長期的に持続可能な形に転換していく基盤づくりが必要です。これらに取り組む時期は「今」なのではないかと考えております。
最後になりますが、建設業界のこれまでの災害対応への多大なるご尽力へ厚い御礼と、業界のますますの発展をご祈念いたしまして、本稿を閉じたいと思います。

