「茨城の防災」危機管理を問う

茨城の防災 危機管理を問う 9

2025.10.01

「茨城の防災」危機管理を問う

松山 和規(まつやま かずのり)
1965年2月11日生まれ。60才。89年に県庁へ入庁し、高齢福祉課へ配属。土木部企画員、監理課長、土木部次長などを経て、2025年3月に定年を迎えた。現在は県建設業協会専務理事を務めている。

健全な企業経営と受注確保

 地域建設業は、人々の快適な生活を支える道路や河川の整備、建築物など、地域の社会資本の整備やその維持管理を担うとともに、災害発生時には最前線で災害対応にあたる「地域の守り手」でもあります。
 特に近年、自然災害の激甚化・頻発化の傾向は顕著であり、今年も台風や線状降水帯、ゲリラ豪雨などが全国各地で発生しており、いつどこで災害が発生してもおかしくない状況となっています。
 地域建設業とは、こうした災害が発生した場合、真っ先に現場に駆け付けます。例えば、河川の堤防決壊個所の応急復旧、道路法面や斜面の崩落により流失した土砂・倒木の撤去、道路陥没個所の復旧作業など、昼夜を問わず現場の最前線で応急復旧工事に従事し、応急復旧後の本格復旧・復興作業も担っています。
 また、鳥インフルエンザや豚熱が発生した際には、埋却処分などの防疫作業にも、同じように昼夜問わず従事します。
 人々の安全・安心な暮らしを支えるためには、地域建設業は必要不可欠な存在なのです。
 しかしながら、地域建設業を取り巻く状況は、公共建設投資の横ばいが続き、実質投資額が減少している中で、資機材価格の高騰や人件費上昇などにより、経営環境は厳しさを増しています。
 社会資本の整備・維持管理を行い、地域の安全・安心を確保するための守り手という社会的使命を担い、この役割を将来にわたって継続的に果たしていくためには、健全な企業経営と安定的な受注の確保が前提となります。
 そのため、公共発注機関などの関係機関に対し、次のような点を要望しているところです。
・6月に閣議決定された「国土強靭化実施中期計画」を着実に実施し、防災・減災、国土強靭化等、社会資本整備の計画的な推進と公共事業予算の持続的・安定的な確保・拡大。
・物価上昇を超える賃金を確実に実施するための労務単価等の引き上げ。資機材価格や人件費の高騰による経営悪化や入札時の不調不落を防ぐため、最新単価・実勢価格を反映した予定価格の設定。
・人件費については、賃金の行き渡りを図るため積算単価で下請け業者に支払うことが求められている。しかし、現行の入札制度では、人件費、材料費および管理費(一般・現場)等を合計した積算価格をもとに競争しており、入札価格は予定価格の91~92%となっている。そのため、確実な人件費の行き渡りを図るためには、人件費部分については積算単価額を全額受注者が受け取れるような入札制度への改正、または一般管理費の大幅な引き上げ。
 これらの要望が着実に実現することにより、地域建設業が継続してその役割を果たせるとともに、担い手の確保にも繋がるものと期待したいです。

災害に備えインフラ整備促進

 地域建設業が、これから将来にわたってその役割を果たしていくためには、担い手の確保・育成や、働き方改革への対応などにも取り組んでいかなくてはなりません。
 担い手確保については、当協会として、高校生、大学生等を対象とした「建設現場見学会・職場体験・建設業インターンシップ」の実施、次世代を担う子供たちとその保護者を対象とした「建設業親子見学会」や「建設フェスタ」の開催など、親子、幼児、小学生から大学生まで、切れ目なく人材確保に向けた取り組みを引き続き実施し、建設業への理解を深めてもらうと共に、魅力を発信し、将来の入職促進を図っています。
 また、工業高校生を対象とした資格取得支援による入職促進や、新規入職者に対する新規入職者研修・入社後3~5年程度の社員を対象にしたフォローアップ研修の開催により、若年者の定着促進を支援しています。
 働き方改革については、働き方改革関連法に基づく長時間労働の是正、適切な賃金水準の確保、適正な工期の確保や休日の確保に関する必要な措置として、
・完全週休二日制や準備・片付け時間、移動時間等を考慮した工期設定と諸経費の計上。
・「地球沸騰化」により夏場の過酷な屋外作業を行う建設業は大きな影響を受けており、この状況を踏まえた熱中症対策費の計上、熱中症対策義務化の影響による工期や経費の適正な対応、さらに地域や季節の実情に応じた柔軟な働き方の整備検討
 といった事項について、関係機関に要望を行っています。
 今後、必ず発生が予測されている大規模地震や、豪雨・台風による大規模災害など、これらに備えるためには、防災・減災、国土強靭化等、社会資本整備の計画的な推進が、県内においてもまだまだ必要となります。
 緊急輸送道路をはじめとした道路ネットワークの整備、堤防のかさ上げや河道掘削などの中小河川も含めた河川整備、橋梁や地下埋設管、建築物の耐震化、老朽化した社会インフラの維持更新、また、路盤補修や道路・河川の除草、冬季における凍結防止作業といった日常的な維持管理も重要です。
 これらを担うのは地域建設業です。そして、いざ災害が発生した際に最前線で活動するのも地域建設業です。
 そのため、国や県との協定に基づく災害時の応急対策事業等への即応態勢を整え、円滑な災害対応の実現に貢献するとともに、各種防災訓練にも積極的に参加し、連絡体制の点検・強化に努め、また、高病原性鳥インフルエンザおよび豚熱等の特定家畜伝染病発生時における防疫業務では、県の担当部署と協力体制や防疫体制の再構築について、継続して協議を行っています。
 地域建設業は、県民の安心・安全を守るためには絶対に必要な存在です。
 この地域建設業が、将来にわたりその役割を果たせるよう、協会としてもしっかり取り組んでまいりますので、関係者の方々のご支援・ご協力を引き続きお願いいたします。

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