蔦で繋がる江戸と令和
2025.09.02
コラム「四季の風」
◆「米が、ない?」。大河ドラマ『べらぼう』では、浅間山の噴火によって米が不足する事態を描き、現代にリンクすると話題となった。令和の時代、リアルタイムで米不足に共感することになろうとは、思いもしなかった。
◆このドラマの主人公は蔦屋重三郎。書をもって世を耕す、その名も「耕書堂」を開店し、数多の名作を世に送り出す。その鮮やかな手腕により打ち出されるアイデアもまた、現在のマーケティングに通ずるものがあるのが面白い。
◆主人公である蔦重と並行して描かれるのが、時の老中・田沼意次。彼もまた、彼なりの志をもって奔走するが、様々な思惑の渦巻く江戸城内であらゆる壁に阻まれる。苦悩しながらも困難に立ち向かう、見応えのある意次像だ。
◆作中では市井と幕府、その価値観や認識のズレも描写される。立場の違う人が互いを理解し合う難しさもまた、現代と変わらないだろう。書物の力で世を豊かにしようとする蔦重が、今後どのように奮闘するのか。物語を見守る視聴者としても、ままならない現代を生きる身としても、楽しみに視聴したい。(S)

